今から25年前、世の中が「ミレニアム」と大騒ぎしていた頃。自動車保有台数は右肩上がりに増え続け、自動車業界がイケイケどんどんだったこの年、名車が数多く生まれている。特別な年に生まれた、極上の新型モデルを振り返っていこう。
文:佐々木 亘/画像:日産、ホンダ、トヨタ
【画像ギャラリー】豊作! 傑作! 名車ぞろいなナチュラルボーン20世紀末少年たち(22枚)画像ギャラリー中と外の両面を見据えたクルマづくりが当時の魅力
当時の円ドル相場は1ドル108円程度、現在の140円を超え150円に迫ろうとする為替相場と比較すれば、大幅に円高の時代だ。ガソリン価格は1L/105円ほどで、ハイオクが200円に迫る現在と比較すると、羨ましい限りである。
この年に誕生したクルマで多く見られたのは、日本と欧州の両方で高い評価を受けるクルマだ。
例えば日産 エクストレイル。初代モデルが登場したのが2000年の11月で、9月にはパリサロンにコンセプトカーX-TRAILを出展した。
日本国内では2Lガソリン(NAとターボ)だけだったが、欧州ではディーゼルが設定され、中近東やオセアニアでは2.5Lガソリンも用意されている。海外での売れ行きを非常に意識した、エンジンタイプの設定だったと思う。
また、7代目のホンダ EU型シビックや2代目トヨタ RAV4は、国内市場を見ながらも、海外市場を強く意識したクルマだ。
どちらも海外戦略を重視したモデルであるが、しっかりと日本市場のニーズも意識した中で開発され、国内・海外の両方で安定した販売を続けた。
このように、四半世紀前の日本メーカーは「中(国内)も外(海外)も」両面を見据えたクルマづくりが出来ていたはず。いつから国内軽視で海外に重きを置いた新型モデルが出るようになってしまったのか。四半世紀前のクルマづくりに、少し戻ってほしいものだ。
爆売れのアイツが出たのもミレニアム
2000年に最もインパクトを残したクルマと言えば、ホンダ ストリームであろう。低重心かつロールーフの5ナンバーミニバンはストリームからスタートし、その後のミニバンの潮流を大きく変えた存在だ。
またワゴンの存在感を高めたのがトヨタ カローラフィールダーである。こちらも登場は2000年。カローラよりも20mm長い全長と10mm高い全高で、5ナンバーサイズのステーションワゴンを大きく牽引する存在となる。
さらにフルサイズミニバンではエスティマが登場する。初代のミッドシップエンジンを改め、FFへと変更したことにより、エンジンの大型化と居住性が大幅に向上。ストリームやカローラフィールダーの陰には隠れているものの、こちらの売れ行きも凄かった。
名車の最終モデル販売がスタートした年でもある
2000年に販売を開始して、当代でドロップアウトしてしまったのが、セルシオとマークIIだ。
セルシオは内装デザインにリッツカールトンの客室を参考にした超豪華仕様。すべてのドアにイージークローザーが搭載され、カーオーディオにはマークレビンソン・プレミアムサウンドシステムがオプション設定されたのも話題となった。
マークIIは姉妹車のチェイサーとクレスタを廃止した背水の陣。スポーティで豪華なセダンはマークⅡのトレードマークで、9代目モデルでもその流れが踏襲されている。
セルシオはレクサスLSの登場に伴い、マークIIはマークXの登場に伴い、その車名に幕を下ろした。ただ、この両者は車名を変えての再登板となっているものの、トヨタのセダンの核とも言える両者のドロップアウトは、現在も続くセダン不人気の予兆だったのかもしれない。
四半世紀前というと、かなり前のイメージだが、今も現役で走るクルマを多く見かける新型モデルの当たり年だ。
少々苦戦する、昨今の日本の自動車業界。温故知新ではないが、四半世紀前のクルマづくりや販売戦略などを振り返ってみると、新たな道理や知識が見いだせるかもしれない。
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