大学自動車部は、れっきとした体育会系。しかし今回ご紹介する東京理科大学自動車部は、学年の上下にとらわれることなく全員仲良し。アットホームな雰囲気が功を奏したか、1年生や女子部員も多いという、他校自動車部も羨む環境なのだ!!
※本稿は2025年4月のものです
文：奥野大志／写真：奥野大志 ほか
初出：『ベストカー』2025年5月10日号
そもそも「自動車部」ってナニ？
自動車部は野球部や陸上競技部等と同じ体育会に所属する運動部。多くの私立大学が全日本学生自動車連盟（学連）主催のジムカーナやダートトライアルなどに出場し、タイムと整備力を競っている。
自動車部は「モータースポーツ」という言葉が一般的になる以前から活動しており、100年以上の歴史を誇る伝統校もある。
●東京理科大学自動車部プロフィール
・正式名称：東京理科大学 I部体育局 自動車部
・創部：1954年
・部員数：23名
・試合車：2台（EK9シビック、ZC32Sスイフトスポーツ）
・活動場所：野田キャンパス内ガレージ
・活動日：毎週木、土曜日
体育会でありながら自由でフランクな雰囲気
京理科大学は140年以上の歴史を誇る、理工系の総合大学です。東京都新宿区にある神楽坂のほか、葛飾、野田（千葉）、長万部（北海道）にキャンパスがあり、自動車部は野田で活動しています。
2月某日、待ち合わせ場所に着くと、自動車部のみなさんが愛車とともにスタンバイしてくれています。車種はスポーツ系からワゴン、セダン、コンパクトなど、バラエティ豊か。いろいろなクルマ好きが集う自動車部であることがわかります。
そのなかでひときわ目を引くのがイエローのコンパクトカー。軽自動車のように見えますが、オーバーフェンダーを装着しており、車種は不明。ただ、オーナーが相当な好き者であることはわかります。
「今日はよろしくお願いします。自動車部主将の山道陽輝です。自分のクルマはあそこにあるイエローのミラジーノです」。
ん？ イエロー？ ミラジーノ？ さっきのコンパクトカーはミラジーノだったのね！ でも、オーバーフェンダーだし、ナンバーも白色ですが……。
「YRVの1.3Lターボに載せ替えたフル公認車です。アウトビアンキが好きなので、それっぽく仕上げています」（山道主将）。
軽自動車改の普通車に乗る自動車部員って……。なんと濃いキャラクターの持ち主！ インパクトが大きすぎてのっけから驚きまくりです。
続いて部長の高井良千怜さんとあいさつ。高井良さんのキャラも濃く、愛車はなんとスプリンターの4速マニュアル。入学時はクルマにまったく興味がなく、自動車部の存在すら知らなかったものの、自動車部ライフをエンジョイしているミラクル大学生です。
徒歩でガレージに移動し、インタビュー開始。ガレージは航空関係の団体の隣にあり、理工系の大学であることを強く感じます。
「現在の部員数は23名で、毎週木曜日と土曜日に活動しています。大会は主に学連戦のジムカーナとダートラで、フォーミュラジムカーナにも参加しています。部の雰囲気はゆるく、自由そのもので、大会前になるとそろそろやばいから本腰を入れようという感じです」（山道さん）。
「主将がこんなキャラなので、学年の上下関係があまりなく、みんな仲がいいです。オフシーズン中、部員同士で遊びに行くこともよくあります」（高井良さん）。
正直、第一印象どおりの自動車部でした。体育会であることに変わりはありませんが、結果を追求するというより、各々がクルマのある生活を楽しんでいる印象。個人車の趣向がバラバラなのも納得です。
「学連戦の合間を見て、2～3カ月に一度、ジムカーナやダートの練習会を行っています。
試合車はジムカーナ用のEK9シビックとダート用のAE111カローラレビンがありますが、ダートラの新規定に対応するためにスイフトスポーツを導入しました。クルマを作り、大会にきっちり出るというのがひとまずの目標です」（山道さん）。
ご存知のとおり、世の中は物価高騰に歯止めがかからない状況。あらゆるもののコストが上がっており、理科大自動車部の活動も例外ではありません。試合車の入れ替えは相当ハードルが高かったはずです。
「入れ替えだけでポンと50万～60万円は出ていきました。大学は結構支援してくれるのですが、それでもカツカツです」（山道さん）。
とはいえ、2024年の春に12人の1年生が入部したのは明るい要素。速さを見せている新人や貴重な女子部員も入部しており、女子団体を含む大会での活躍が期待されます。
「機械がいじれる運動部ってないじゃないですか。あとは学生フォーミュラくらいですから。クルマ好きの男子は自然に集まってくれますが、女子は人数が減ると大会に出られなくなるので、必死になって集めています」（高井良さん）。
理工系だけに卒業後はメーカーに就職する人が大半。山道さんは重工メーカー、高井良さんは自動車メーカーに入社したいと語っていましたが、高井良さんは自動車部に入ったことで、希望の就職先という目標を見つけることができたそう。自動車部で過ごす濃厚な時間が、学生生活のプラスになっているのです。
理科大自動車部のみなさん、物価高を若さとアイデアで乗り切りましょう!! そして卒業後、多くのイノベーションを生み出してくれることを期待しています。
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