日本のクルマ社会では今やAT車が当たり前。でも、便利さに甘えて“やってはいけない操作”を無意識に繰り返していませんか? 今回はAT車の寿命を縮める代表的なNG行為を紹介していきます。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:あんみつ姫@Adobe Stock)
【1】完全停止前のD、RシフトはNG?:進化したATでも“やさしく扱う”が基本

国内販売される新車の約99%がAT車となった今、「操作ミスがクルマの寿命を縮める」ことを意識している人はどれほどいるでしょうか? 今回は専門家のコメントや技術的な背景をもとに、AT車の寿命に関わる4つのNG行為を紹介。知っているようで知らなかった事実を解説します。
よく言われる「止まりきる前にシフトすると壊れる」は、昔のATでは一理ありました。現在のAT車は進化しており、ある程度の速度ではシフト自体ができない構造になっています。クラッチとブレーキを電子制御で制御する設計により、簡単には壊れません。
とはいえ、頻繁に中途半端な速度でD、Rを繰り返すと、耐久性に影響が出る可能性はゼロではありません。特にアクセルを踏みながらの無理な変速はトルクがかかりすぎて危険。ゆっくりとした車庫入れ程度ならOKでも、完全停止してからのシフトが“安心”の基本動作です。
なお、スズキの5AGS(オートギヤシフト)などのセミAT車は例外で、これはMTベースの仕組みのため、動いている状態でD、Rシフトを行うと異音やギヤ破損の原因になります。
【2】駐車時の“Pレンジ先入れ”は要注意:パーキングブレーキが先
Pレンジに入れてからパーキングブレーキをかけている人、多いのでは? 実はこれ、トランスミッションに不必要な負荷をかけてしまう操作です。
Pレンジでは「パーキングロックポール」と呼ばれるツメが歯車を止めているだけ。坂道や強風でクルマがわずかに動くと、このツメに想定外の力が加わり、破損や抜け落ちのリスクが生じます。
正しい順番は「フットブレーキ→パーキングブレーキ→ Pレンジ」。この手順は取扱説明書にも記載されている基本操作。慣れていない人こそ、今すぐ見直したいポイントです。
さらに、Pレンジだけで車から離れる行為は道路交通法違反にもつながる恐れがあり、重篤な事故では懲役刑や罰金の対象になります。安全と法令遵守の両面からも、正しい手順を心がけましょう。
【3】下り坂での“ニュートラル走行”は危険だらけ!:大きな誤解!
「燃費がよくなるから」と、坂道でNレンジに入れる人がいますが、これは大きな誤解。AT・MT問わず、シフトが入った状態でアクセルをオフにすると、エンジンは燃料カット状態になります。つまり、Nレンジではむしろ燃料消費が増えることに。
さらに、Nレンジではエンジンブレーキが効かないため、フットブレーキだけに頼ることになり、フェード現象やベーパーロックを招く危険性も。安全面でも明確にNGな行為です。
「燃費が良くなる」どころか「クルマにも命にも危険」な走行方法として、絶対に避けるべきです。急な下り坂ではエンジンブレーキとM1レンジやBレンジなどを併用するのが正解です。
【4】ギヤが入る前のアクセルON:急発進+ATにダメージ
信号待ちなどで一度Nレンジに入れた状態から発進する際、Dに入れずに先にアクセルを踏んでしまうミス、思い当たりませんか? この状態でDレンジに入れると、高回転状態でいきなり駆動がかかり、ミッションに大きな衝撃が走ります。
現代の車両では電子制御で防がれているものもありますが、10〜20年前の車両ではこのミスが現実的なダメージに直結します。特に長く愛用している車ほど注意が必要です。
信号待ちや一時停止では、常にDレンジで待つのが基本。シフトレバーを安易に操作しないことが愛車を守るポイントです。
編集部まとめ
“昔からのクセ”がクルマを傷める原因になること、意外と多いです。メーカーもある程度は防御策を講じていますが、やはり長く続けると寿命が短くなります。
今回挙げたAT車を痛める行為をすぐにやめてATが長持ちするように労りながら点検、メンテナンスを行いましょう。
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