この四半世紀で新車の値段は驚くほどに上がった。2000年に販売されていた9代目カローラの新車車両本体価格はGグレードで151万8000円。大衆車と言われるクルマは200万円も出せば十分に買えた時代が羨ましい。今や軽自動車やヤリス・アクアだって200万円では買えなくなってきた。お手頃な新車というものは、もう出てこないのだろうか。
文:佐々木 亘/画像:トヨタ
【画像ギャラリー】これ250万円以下なの!? 内装高級すぎん!? プレミオが秀逸すぎたぜホント(14枚)画像ギャラリーファミリーカーが500万円!!
昨今の新車は本当に高い。ファミリーカーと言われるミニバンやSUVの中間層でも、500万円くらいの予算は覚悟しなければならないし、小さいクルマも、どんどん高級になっている。
例えば、ファミリーカーの代表格のミニバン「ノア」を新車で購入するとしよう。リセールも考えてグレードはハイブリッドのS-Z、快適利便パッケージにテレビやCD/DVDデッキ、安全装備や後席ディスプレイなどを加えていくと、オプションだけで100万円近くに達する。
ノアS-Zの車両本体価格は367万円、ここにオプション100万円が乗っただけで、既に450万円を超えていく。さらに諸経費が加わって支払総額はざっと480万円近くだ。
10年前の感覚では、車両購入に480万円といったら、ノアではなくてアルファード・ヴェルファイアが買える金額である。そのアルファードは今、700万~800万円出さないと買えないクルマになってしまった。
どうしてこんなにクルマが高いのか
車両価格の高騰には、様々な原因がある。社会的な問題では原油価格の高騰や原材料費の高騰はもちろん、円安方向へ振れている為替相場の影響も大きいだろう。加えて、国内の新車に対する安全基準の見直しや法整備によって、一昔前よりも標準装備しなければならない機能が増えていることも一因だ。
シートベルトからはじまり、エアバッグ、ABS・トラクションコントロールなどの電子デバイス、衝突被害軽減ブレーキ、各種センサー類、バックカメラやオートライトも、もはや付いていなければならないものとなっている。
こうした装備の義務化は、国際的な枠組みによって決まっているものもあるが、デザインありきのクルマづくりを、補完するための装備という見方もできる。
センサーがあるから、バックカメラがあるから、こういうデザインでも大丈夫だよねと進めていき、見切りの悪いクルマや、死角の多いクルマが、数多く生まれているのも事実。
そうしたクルマには、自ずと安全装備が必須となるため、車両生産コストが高まり、車両本体価格も影響を受けているはず。
もっとシンプルに、安全なクルマを作れれば、ここまでクルマの値段が上がることも無かっただろう。
物価高が続いているが、クルマの価格も年々上昇している。給料は対して上がってないから、新車購入なんて、夢のまた夢になってしまうよ。
プリウス全盛期に売れまくったアリオン・プレミオを見習え
石を投げればプリウスに当たると言われた、30系プリウスの全盛期。人々は挙ってプリウスを買いに来たのだが、その陰で販売台数を伸ばしていたクルマがあった。それがアリオン・プレミオである。
プリウスの売れ筋はSグレードで、当時の車両本体価格は232万円だった。オプションと諸経費を加えると、コミコミ300万円で買えるクルマだ。対するアリオンはA15Gパッケージがよく売れた。車両本体価格はプリウスよりも50万円以上安い180万円。250万円あれば、お釣りが来るのだ。
ハイブリッドカーの旨みが無い、年間走行距離が伸びないユーザーなら、純ガソリンのアリオンを買った方が、5年後のトータルコストも十分に安い。当時プリウスを買いに来て、アリオン・プレミオを契約して帰るというユーザーは珍しくなかった。最近は、こういった下位互換的なクルマが本当に減っている。
トヨタラインナップで強いて言えばルーミーやライズが、かつてのアリオン・プレミオ的な位置のクルマになるが、コンパクトではなくミドルサイズのクルマで、シンプルかつ安いクルマが今必要だ。
クルマは夢を運び、感動を与えるもの。だからこそ手の届きやすい価格帯で販売し、クルマに親しんでもらうことも必要ではないだろうか。クルマ入門編のような、親しみやすい価格帯のクルマが登場してくれることを切に願う。
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