e:HEVにe-POWERなど、自動車メーカー各社のハイブリッド技術は日進月歩で進化を続けている。中でも四半世紀以上前に登場した、トヨタハイブリッドシステム(THS)は、現在第5世代となり、驚くような進化を遂げてきた。走行フィールや使い勝手はどう変わっているのか。愛車を第3世代のTHSから第5世代のTHSへ乗り換えた筆者が、日常フィールの違いを解説していく。
文/佐々木 亘:写真/ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】進化したTHS搭載の90ノアはカッコよさも快適性も完璧よ!!(4枚)画像ギャラリー今でも画期的過ぎる3代目プリウスに搭載のTHSⅡ
2009年の3代目プリウス登場と同時に、新しいTHSⅡが登場した。これをリダクション機構付きTHSⅡ、もしくはTHS第3世代と呼ぶ。
モータートルクを増幅させるリダクションギアを開発したことにより、THSⅡ全体の軽量化と小型化、そして低コスト化につながり、重量増を抑えながら大きく燃費の確保につなげているのだ。
また、トルクアップしたモーターの制御で、車体の前後方向の揺さぶり(ピッチング)を抑える、ばね上制振制御の技術が登場したのも第3世代から。
EVモードでの走行は時速30kmまでで、通常走行時のEV走行は時速72kmまで行える。ただ、高速道路の巡航時には設定上EV走行を使うことが出来ず、燃費が大きく伸びるどころか、市街地燃費よりも下がることもあった。
第3世代THSに関しては、エンジン排気量を拡大することにより、苦手の高速巡行をこなしていた印象が強い。また、モーター出力がそれほど大きくないので、発進時から巡航までをEV走行のみでこなすことも、かなり無理がある状態だった。
それでも日本にHEVを広め、HEVの良さを伝え歩いた3代目。3代目プリウスや初代アクアに搭載されて、トヨタとハイブリッドを大きく結び付ける役割をしたことは、歴史的な偉業である。
ノア・ヴォクシーに託された新型の未来!第5世代THSがマジすげぇ
第4世代THSは、4代目プリウスに搭載された。細かい改良が続けられ、燃費は更に伸びることに。
そして2022年、ノア・ヴォクシーのフルモデルチェンジで、THSは第5世代へ進化する。名称もトヨタシリーズパラレルハイブリッドと改名された。
ノア・ヴォクシー単一車種として考えると、先代モデルには3代目THSが搭載されており、モデルチェンジを機に飛び級の第5世代へ大幅進化した形だ。この第5世代THSは、トヨタハイブリッドシステムのほぼ完成形とも言える。
進化の内容は出力アップに小型軽量化、さらにはロス低減と多岐にわたり、特にモーター出力の16%引き上げ(72PSから95PSへ)は、走りに大きな革命をもたらした。
EV走行できる速度域が時速110kmを超えていき、高速道路でのアクセルオフ時やアクセルを小さく開けた状態での巡航時にはEV走行ができるため、高速道路走行時の燃費が驚くほどよくなっている。また、市街地では大きなモーター出力が、発進時から巡航時まで大きく機能するようになった。
アクセルの踏み方を工夫してあげる必要はあるのだが、EV走行だけでしっかりと時速60㎞程度まで加速できるようになったのは、大きな進化だ。ハイブリッドバッテリーの残量がある程度あれば、BEVに近しい走行もできてしまう。
ただEV走行をしてくれるアクセル開度は、ハイブリッドインジケーターのECOの表示(ひと目盛り)までに抑えないといけないのは、少し難しいところ。それ以上にアクセルを踏み込むと、クルマの側でドライバーがモアパワーを要求していると感じ取り、エンジンを動かしてしまうのだ。
第5世代THS搭載車で、常時ハイブリッドインジケーターを見ながら運転するのは難しい。アクセル開度を体で覚えるか、ヘッドアップディスプレイ搭載車ならメーター内にハイブリッドインジケーターを表示させて運転すると良いだろう。
エンジンとモーター両方の動力を、無駄なく使えるのがTHSの良いところだ。BEVのスムーズさとエンジン車の音や加速感を、市街地でも高速道路でも味わうことができる。これはe:HEVやe-POWERには無い大きな特徴であろう。
第3世代は万人に低燃費を提供する仕様だったのだが、第5世代THSは機能や動きを理解すればするほど燃費が伸びていく、非常に玄人好みの味付けになったと感じる。これもユーザーがHEVに慣れてきたからなせる業だろう。今後もトヨタHEVの進化から、目が離せない。
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コメント
コメントの使い方THSの強みはなんといっても「適切な運転をすればカタログ燃費がちゃんと出る」ことにあると感じている。
他社と違い、盛っていない。実用外の環境で測定していない
「普通に役立つ」ことのありがたみを感じる